日程: | 2012年1月7日~8日 |
メンバー: | 藤野(L)、斎藤(幸)、石川 |
報告: | 石川 |
硫黄岳山頂にて撮った「赤岳~横岳」です。 | 赤岳山頂の三名です。 |
今回の登山は出発前から心配が多かった。1月4日から5日未明まで降り続いた雪は北陸地方に一晩で80cm以上積もった。大雪の影響は? 赤岳に登れるだろうか?
縦走は可能だろうか? 等など。 当日は前日までの低気圧が嘘の様な晴れになり、藤野さんの軽の4WD車で八ヶ岳に向かった。美濃戸口に到着すると、駐車場には既に多くの車があり、バスからは多くの登山者が降りてくる。冬山なのに随分登山する人が多いんだなぁ~、なんて考えていると、美濃戸への道が始まった。「行けるかな?」なんて言っていたのに、いざ行ってみると藤野さんの車は意外と強力で、美濃戸までスイスイと行ってくれた。 早速駐車場で登山準備をした。車には通常のピッケルが3本積んであり、私の短いピッケル(これは登攀用のバイル、アイスアックスだと教えてもらった)を見た藤野さんがその内の一本、60cm強のものを貸してくれた。南沢を歩き始めると回りは雪と樹木しかない、静かで今朝まで当たり前のようにあったものが全く無い、自然のみの世界に変わった。木が風に揺れる音、木から落ちた雪が飛んでいく様子、自分が踏んだ雪を圧縮する音、全てが新鮮で完全に日常のことを忘れさせてくれる。行者小屋までは急な登坂が少ないこともあり、周囲の景色を楽しみながらのんびりと歩いていった。先行パーティーがおり、休憩のタイミングで追い越したり、追い越されたりしていると、いきなり「ご家族で登山ですか?」との質問。藤野さん=父、斎藤さん=母、私=息子、に見えたのだろう。斎藤さんと笑いながら「違いますよ。」なんて会話が登山の彩を追加してくれた。 美濃戸から約3時間で行者小屋に到着。あたりは完全に雪景色で、小屋前には多くのテントが張ってあり、昼食を摂っているのを見て、人気の山であることを改めて実感した。 我々もここで昼食・休憩とした。赤岳山頂部は強風が吹いているようであったことなどから、当初予定の文三郎~赤岳~展望荘ではなく、地蔵尾根~展望荘に変更となった。昨年の2月、藤野さんと斎藤さんが地蔵尾根を登ったとき、一箇所ロープを出したとのことで、ハーネスを着けて14時過ぎに出発した。 歩き始めて最初は樹林帯の中を歩いていたが、やがて傾斜がきつくなるに従い、周りの木々も低くなった。一本を立てたとき、藤野さんより、上は風が強くなるので目出帽を被るよう指示がでた。目出帽、帽子、アウターのフードを被り、人生初の頭部完全防備をした。ちょっと登ると最初の階段となり、風が強くなりだした。歩みを進めると傾斜はどんどん急になり、設置されている鎖につかまり、メッシュの階段にアイゼンを引っ掛けないよう慎重に足を運んだ。階段を登り終え少し登るとお地蔵さんが祭られており、雪と岩だけの道となった。赤岳展望荘が間近に確認できるので、安堵しながらもピッケルを刺して、鎖を摑みながら登って行くと、稜線に着いた。ここにもお地蔵さんが祭られていた。左には横岳、右には赤岳、阿弥陀岳を改めて眺めることができるが、全く見ている余裕が無く、展望荘まで急ぎ足で進んだ。到着と同時に藤野さん、斎藤さんと握手をし、お互いの労をねぎらった。 直後、雪煙が舞い上がる横岳の写真を撮っていた私を呼ぶ、大きな声。指された方向を見ると、なんとブロッケン現象が!しかも二重になっている!!疲れなんて忘れて、3人でブロッケンの中に入って記念写真を撮った。滅多に見られない現象だ。 寒いので赤岳展望荘へ逃げるように入った。外気温-10℃とは全く別世界で暖かく、ゆっくりアイゼンを外した。小屋の方から「お疲れ様でした。」と出されたコーヒーが、張り詰めていた緊張感を解してくれた。 小屋ではバイキング形式の夕食が出され、豚汁や辛口のスープカレーなど体を温めてくれる品が多く、おかわりも自由。疲れた体には栄養を補給するのが一番と考え、2人前くらいの食事を摂り、コタツで十分に温まった後、個室にて眠りについた。 翌日の早朝は頭痛で目が覚めた。頭痛は朝食を摂っても治ることがなく完食することができないのではないかと思うほどで、藤野さんも体調が優れないようで不安だったが、まずは赤岳へピストンで行くことになった。 小屋を出ると冷たく乾燥した空気が、気持ちを引き締めてくれた。歩き出すと頭痛は無くなった。先頭の藤野さんも二番の斎藤さんも体調が良くなったようで、足取りが軽い。出発時かなり前方にいたパーティをいつの間にか追い抜いてしまった。赤岳に上っていくにつれて斜度が急になり、前を行く斎藤さんがアイゼンを蹴り込むと、大きなうろこ状の雪がざらざらと、大量に落ちてきた。東北生まれで雪には馴染み深いのだが、こんな雪は初めてだった。ふと周りを見みると、周囲は砂漠に出来る模様と同じような形をした雪面が、一面に広がっており、この過酷な環境を登ってきた者だけが見ることが出来る景色を楽しんだ。山頂まで登ると360度のパノラマが歓迎してくれた。冬山の景色は澄んだ空気のためか、周辺の山々をきれいに見せてくれ、いつまでもここで景色を見ていたいと思わせるほどだった。下りは藤野さんからアイゼン装着時の歩行方法、ピッケルの使い方などを教えていただきながら、また注意を要する箇所では具体的なアドバイスを受けて、展望荘まで一気に下った。登り30分、下り20分で冬にしては早いと思った。 展望荘で、荷物の整理、コーヒーで一服した後、改めて目出帽、ゴーグル、フード、ハーネスを装着し、手袋+オーバー手袋の完全装備で、横岳へ向かって出発した。歩き始めて直ぐにゴーグルが軽く曇ってきたが、視界を遮るほどではないためそのまま歩いていた。大権現の手前で休憩したとき、ゴーグルを外してタオルで曇りを取ろうとすると、ほんの数十秒でゴーグルの中は薄い氷に覆われた。これを剥がすのに苦労しながら雪山の厳しさを再認識した。横岳奥の院までは、ハシゴ、岩、深い雪に細い踏み後しかない部分や、鎖場、岩場を上下するコースであった。先行する藤野さん、斎藤さんの動きをよく見て、慎重にアイゼンを乗せる場所、ピッケルを左に刺したり右に刺したり、ピックを刺したり引っ掛けたり、冬山登山を学習しながら歩き続けた。到着した横岳奥の院で、藤野さんより小同心、大同心のバリエーション、岩と雪のミックスルートについて、切り立った岩を見ながら話を聞いていると、小同心より1パーティー登ってきたので正直驚いた。その様子を見ながら「かっこいい」と思っている自分がいて、ここのミックスルートをそのうち登ってやろうと決意し、冬山装備でクライミング訓練を開始しようと思った。 奥の院から急な細い斜面と梯子を慎重に下り、鎖場を通過し、しばらく行った先で小休止、振り向くと大同心の垂直な岩壁が横から確認できた。大変厳しい山行になるだろうが、こちらも登ってみたいルートであった。 硫黄岳山荘前で小休止後、硫黄岳までの緩やかで長い道のりを登りきり、硫黄岳に到着した。周囲は全く雲が無く、正面には北アルプス、後ろには今日歩いてきた赤岳から横岳が一望でき、冬山に来てよかったと再度実感した。 赤岩ノ頭で最後の眺望を楽しんで、ゆっくり赤岳鉱泉に下った。休憩後、北沢を通り美濃戸の駐車場に帰着した。出発前は案じていただけに、無事下山できた安心感と充実感でいっぱいであった。車が走り出すと後ろ髪を引かれる思いがした。 <コースタイム> 7日:美濃戸10:20―南沢―13:30行者小屋前14:10―地蔵尾根―16:10赤岳展望荘/宿泊 8日:赤岳展望荘7:00―7:30赤岳7:45―8:05赤岳展望荘9:00―三叉峰―10:05 大権現10:10―10:25横岳奥の院10:30―11:25硫黄岳山荘前11:30―12:05 硫黄岳12:10―12:20赤岩の頭12:30―13:20赤岳鉱泉13:40―北沢―14:30 堰堤14:40―15:20美濃戸 |
奥の院山頂にて。 | 風に吹かれる横岳です。 |
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夕日に染まる横岳です。 | 冬のブロッケンは大変珍しいです。 展望荘前にて撮影。 |
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夕日です。右は阿弥陀岳。 |