大気層の構造を説明する福寿講師 気象通報を聞きながら天気図をつける実習
【期日】9月12日から11月13日までの5回シリーズ
【講師】 福寿新一会員
【出席者】〕(敬称略)大塚忠彦、堀内晃代、西田智代、斎藤光子、萩原眞理生、杉坂千賀子、北村 順、
藤野孝人、岡田捷彦、古林宏、名倉登美枝、別所宗郎、武井さん(ゲスト)。
山の気象については過去にも外部から講師を招いて研修会を開きましたが、今回は我々の仲間が、
自分自身の必要から勉強して習得した、いわば“実践的気象学”を講義するという画期的な研修会と
なりました。しかも今回初めて5回シリーズとしたことにより〈気象の成り立ち〉、〈天気図の書き方〉、
〈天気の予測〉など、広範囲に学習することができました。
講師の福寿新一さんと、気象にのめり込みつつある堀内晃代さんの報告を掲載します。(編集担当)
ヨットにあこがれて小型艇を作った。20年も前のことである。いざ海に出てみると、陸で眺めている優雅な
白帆とは大違いで、無風では動かず強風では木の葉のように浪に翻弄され、船酔いはする、夏の日焼けは
焼き鳥のごとく。冬は手足が凍え、寒さに震え、油まみれになり、さんざんな目に遭いながらも止められず
島通いをしていた。その頃、天気の知識の必要性を感じ講習会に参加したり天気図をつけたりしたのは遭
難対策の為であったと思う。
山でも同じだった。山行リーダーとして、つつがなく山行をまっとうする為には気象と読図はかかせず、ラジ
オ、無線機、高度計、ビーコン、GPS等の三種の神器に頼ったのも遭難の恐怖から逃れるためだったのだろ
う。さりながら元来ぐうたら性のため、歳ばかり重ねながら知識は蓄積されず、図らずも講師にされて人前で
しゃべるのも赤面の至りであった。しかしそのために多少の勉強もし、得るものも多くあった。
気象も奥が深くきりが無いが、少しの知識を得れば、それなりに理解力がつきそれはそれで楽しくもあり
実用にもなる。長期山行には特に有効なので、天気図がつけられれば安心感も得られるし、山行にも自信
がつく。
都会人は、普段空や雲など見ることも少ないでしょうが、時には空を見上げよう。雨雲の切れ間から、
入道雲が日の光を受けて眩しく光っているのを見ることがある。表面がモクモクと沸き立って美しく力強く、
感激的でもある。あの雲の中で熱力学の図式が繰り広げられていると思うと、自然界の営みに畏敬の念を
覚える。巻雲やいわし雲、山では湧き上がる層雲、瀧雲など、山の景色や花の美しさと同様に見れば登山
の楽しみもまた少し増えることだろう。
研修会に参加された方の中には、早速、ラジオの気象通報を聞いて、天気図を書き始めた方もおられます。
何事も同じですが、入口で留まらず、思い切って玄関を開ける努力をする必要があります。
研修のお陰で、お天気のことが少しだけ分かりかけた駆け出し者ですが、回を重ねるうちに徐々に興味が
わいてきました。前夜に自分が書き込んだ天気図と、翌朝、新聞に載った天気図とを見比べて、低・高気圧
の位置、天気、風向き、等圧線、前線など、違っていないか照らし合わせるのが朝の始まりになりました。
放送で、12時間後24時間後にこの低気圧は北緯何度、東経何度に移動、中心から半径?キロ、何メートル
の風、と聞いても日本から大分離れているから影響ないか、と記入するのを勝手に止めてパス。そんなこん
なで記入に時間がかかり駆け出し状態からなかなか脱出できません。
観測データをもとにした天気予測とは別に、皆様の生まれ育った土地では、その土地ならではの“天気予報”
がありませんでしたか?自然との係わりを持って予測すると割と当たりましたが、今はだいぶ変化していると
思われます。例えば動物と天気では〈山のカラスの出勤・帰宅時間〉〈鳶の舞う様子〉〈アマガエルの鳴き方〉
〈蜘蛛の様子〉〈ねこの毛〉など。また、自然と天気では〈遠くの煙突の煙のなびき方〉〈雲の上がる位置・種類・
色〉〈風の方向・温度・強さ〉〈夕焼け・朝焼けの色〉〈太陽・月の回り〉〈樹木の芽吹き〉〈葉の色や落葉〉〈あの
山に雪が降ったからそろそろ里にも降る〉など、季節の天気予報がありました。
世界中から情報を集めた気象予報を現代の私たちは知ることが出来ますが、それが外れると「ヤッター自然
には勝つことが出来なかったかー」と、つい自然の摂理に軍配を上げたくなります。結局、頼りになるのは雲と
風の空模様。自然との闘いの天気予報さん!あしたも頑張って下さい。「あした天気になぁーれ」あっ、下駄の
歯が上向いてる。残念!雨だ。
というわけで、11月4日午後6時の気象通報を聞いて私が描いた天気図と、翌5日の新聞朝刊に載った天
気図とを比べてみましたら、こんな結果になりました。福寿さん如何ですか?
堀内晃代さんが描いたこの日の天気図について気がついたことを2〜3申し述べます。
ラジオの気象通報で天気図を作成することは、回数を重ねるごとに上手に出来るようになりますので、
堀内さんも近ごろでは相当旨くなられたことでしょう。
■各地の天気は良くつけられています。船舶からの報告も問題ありませんが、緯度経度を耳で聞いて
直接書き込めるようになると楽になります。緯度線、経度線を覚えましょう。漁業気象も同じことが言
えます。L、H(低気圧、高気圧)はなるべく位置の上に大きめに、気圧は下に記入すると見やすくな
ります。
■寒冷前線は複数の点を通報される場合が多いので判かりやすいのですが、温暖前線は2箇所のみ
の通報がよくあります。この場合は風が押している方に膨らませて書きます。長くなる場合は通報
通りに書きます。色塗りをして仕上げればさらに見やすくなります。
■等圧線ですが、この日は1020hPaと1016hPaが通報されたようですね。1020hPaの等圧線は問題あ
りません。このように描けばよいのです。
■1022hPaは中間線なので破線で描きます。1016hPaの等圧線は直線的ですが、滑らかな曲線にして
ください(等圧線は同心円的に隣の線に近い形状になりやすい)。
■秋田で1020と1016が接していますが宮古が1017ですから、その外側を通り、函館が1014なのでその
内側を通ります。詳しい位置は按分方によって求めます。他の場所でも各地の天気、風向なども参考
にします。ハバロフスクの西と北京の南側も指定された点を通り無理の無い曲線をさがします。
■今回霧情報は書いてありませんが、この時期かなり多くなります。船舶用の情報なので、慣れるまで
は無視しても良いと思います。ここまで出来ればあと一歩なので頑張って自分のものにして下さい。