C1(カンタレッタ真下)から見上げるワスカラン峰、6768m
目 次 |
(1) ワスカラン国立公園 |
(2) 仕組みは発展途上にある |
(3) どのような形態があるか |
(4) インシカ峰(5530m)の例 |
(5) ワスカラン峰(6768m)の例 |
(6) 計画に当たって考慮すべきこと |
ペルーの首都リマから北400kmをほぼ南北に走るブランカ山群は、アンデス山脈の最大規模で、6000m級
約40座,5000m級約500座の峰々があり、ワスカラン国立公園に指定されている。欧米や日本から登山、
トレッキング、アウトドア、観光等に多くの人々が訪れ、その基地となるワラス(標高3000mに位置し、人口
8万人を擁している)は6月から8月の間は大賑いである。
この時期にワラス及び山域に約1ヶ月滞在し、高度順化を兼ね,5000m級を2座、そして最高峰ワスカラン
(6786m)に登ってきた。見聞した登山事情を記す。これから計画される会員の参考になれば幸いである。
「今年からガイドが同行せず、ポーターのみを同行する登山隊は認めない」ことに規則が改められていた。
増加してきたガイドの救済策か、ポーターの安全と万一のときの補償のためか、理由は良く分らないが、
本番前の登山はポーターだけで安く上げようと考えていた私たちには最初から難題が降りかかった。幸い、
同行者がガイドの国際資格を有していたので、当初計画どおり実行できたが、各所でチェック受けることと
なった。またポーターも決して先頭に立たなかった。
もちろん、ガイドもポーターも雇わず、馬方にBCまで荷を運ばせ、そこからは自ら担ぎ上げることができる
剛の者は問題ない。
入園許可証(有効期間1ヶ月、65ソル)はワラスのガイド協会で入手し、入山時管理事務所で確認を受
ける。私が通過した3箇所の管理所の対応はそれぞれ異なっていたが、ガイドの関係には厳格であった
ように思える。
なお、ガイド料金には6000m以上(アルパマヨは未満だが難度からこれに含まれる),6000m以下、トレッ
キングで格差がある。また、今回訪ねたイシンカ、ピスコのBC、及びワスカランのMC(BCから一つ上のモレ
ーンにある)には山小屋があり、イシンカ・ピスコには元気な者なら露営しなくても登頂できる。
登山、トレッキングとも次のような形態があるのではないか。
@現地の会社等が企画したもの(日本の会社が現地の会社と連携し企画したものも含まれる)に参加希望
に沿うものがあれば、楽で経済的ではないか。
Aこちらの都合に合わせ、ガイド・ポーター・テント番・馬方・共同装備・食糧交通等をすべて地元会社に任せ、
隊を編成。当然高くなる・・・今回の私のワスカラン
Bガイドは自前、ポーター・テント番・馬方・共同装備・食糧・交通等は必要に応じ現地会社に手配を依頼。
経済的・・・今回の私たちのイシンカ、ピスコ、 これは稀有な例ではないか。
C馬方・テント番(必要なら装備、例えばプロパンのガスコンロは効率的)のみ現地会社に手配を依頼・・・
登山隊向き
同行3人。ポーター2人は予め予約していた。地元ガイド会社(BBのホテルを併設しており、ここに宿泊)
SolAndinoに当方の共同装備を示し、不足分 (例えば炊事テント、トイレテント、プロパンガス台、圧力鍋)
をレンタルし、交通、馬方の手配を依頼。前日にポーターと食糧・燃料等の購入に市場とその周辺に行く、
ポーターは用意したリストにより次々に購入、当方が直接支払う。
□第1日
ホテルを車で発ち、登山口Cochapampa(3700m)へ。個人装備はダッフル・バッグにまとめ、ポーターに
託す。荷物の驢馬への積み込みをポーターに任せ、空荷で歩き出す。5時間余でキャンプサイト(4200m)
へ、泊。個人装備の整理以外何も作業しない(以下、同じ)。
□第2日 2時間余でBC(4350m)へ、泊。
□第3日 3時間余かけてMC(4790m)へ、泊。
□第4日 4時発、6時間弱で頂上へ。MCに戻り、荷物を整理し,BCへ。
□第5日 休養
□第6日 ウルス峰往復(私は休養)
□第7日 下山
実にゆったりした、手づくりならではの日程である。記録を見ると一般には第1日と第2日を1日で,MCを設けず
直接往復、第5日の休養はない、すなわち同じ行程を4日間で済ましている。私たちは年齢を考え、ゆっくりした
行程にしたが、この余裕のおかげで3日間下痢・3日間何も食べずでもイシンカに登ることができ、後の行程に
つなぐことができた。テントは個人用のテントを荷上げさせ、圧力鍋を使った食事は魚・肉・野菜・米・デザート
等十分満足のいくものであった。
インシカ谷BC
( 上高地の小梨平や涸沢を牧草地にして寝転び、氷河に覆われた5000mの峰々を眺めている感じ)
山容が堂々として、美しいことから、一度登ってみたい山であった。しかし、氷河登行の技術に欠けることか
ら躊躇していたが、勧められ(ペルー・アンデスでは歩きの山とされている)、踏み切った。
SolAndinoに、@年齢は高いが登山技術においては初心者である、Aゆっくり歩く、Bガイドは英語を少しは
解する、ことを条件に隊の編成を依頼した。経営者サウルは個人装備等を確認したうえで、登頂日に雪崩の
心配を避けるため、早朝出発すれば問題はないということで、ガイド繰りして自らがガイドを勤めた。
同時期に計画していた熟練の、しかし若くてすがすがしい登山家夫妻から同行の申し入れがあったが、実力
が違いすぎ、ご迷惑をおかけすることになるので、お断りしたが、結果として同夫妻の隊とは食事テントを共用し、
同時並行した。
隊は、ガイド、ポーター2人、テント番1人(2隊に共通)で編成され、ロープはガイド・私・ポーター1人が結ぶ。
食糧等すべてお任せで契約し、出発前に支払った。
□第1日
2隊が別々の車で出発し登山口Musho(3020m)着、これまでの登山口に比し、標高も低く見映えも良くない。
しかしホテル、国道から眺めてきたワスカランが面前に真近く見える。5時間20分かけて、標高差1130mを
ゆっくり登る。BCは花崗岩のスラブの直下で、眺めも、テントも良く、食事等の対応もこれまでの比でなく、
すばらしい。
□第2日 2時間スラブの岩場をゆっくり歩いてMC(4700m)へ。ここのルートを間違うと危険である。
□第3日 氷河尻でアイゼンをつけ、高度差620mを3時間弱で登り,C1(5400m)へ。カンタレッタの真下、ここ
から見るワスカランは迫力がある。ガイドと装備を再点検。
□第4日 6時前出発、クレバスを迂回するため、ユマール、バイルを使用。5時間でセラックス帯を抜け、休憩。
すぐC2(6000m)着。明日の取っ付きも悪い。
□第5日 2時過ぎ出発。すぐクレバスを迂回するため、急登し、セラックスの中を通り、急斜面をトラバースし、
クレバスを用心して越える。3時間半で単調な登りへ、11時前円盤状の頂上へ。これまでになくつらかった。
視界はいいが、各山とも雲がかかっている。寒いので30分で下山、難所では登りより時間がかかった。
□第6日 難所では登りより時間がかかったが、ワスカランの雄姿を惜しみながら下山。BCではワイン、ロン
、ピスコ付きの大夕食会を愉しんだ。
□第7日 下山、解散。
(第8日 予備日、ガイド・サウルがポーターも入れた自宅での野外昼食会に招待)
ワスカラン峰からの眺望
ペルー・アンデスはすばらしい。登山にしろ、トレッキングにしろ、選択の幅が広い。しかも気候が良く、食べ物も
おいしい。数ヶ月長期滞在する人もいる。これから計画を練られる方に考慮すべきことを私の乏しい経験から
いくつか列記しておく。
1.日程はゆっくり、しかし目標ははっきり。
高度障害がなかったこと、また体調を壊してもどうにか登れたことも、ゆっくりした日程のおかげと思っている。
ワスカラン国立公園を北アルプス、ワラスを大町に例えた方がいる。確かに選択の幅は広く、いろいろ行きた
くなる。しかし限られた期間を有効に過ごすためには、予め計画を固め、ガイドを予約しておく方が良い。
高度順化のため、2つの湖、イシンカ・ウルス峰を登ったが、1週間のサンタクルス谷トレッキングがより有効
であることを現地で聞いた。少々、ウエブ情報に頼りすぎたようである。
2.装備、食糧は揃っている。
重量に気を配りながら、共同装備を用意した。1人用テント、コッヘルセット等重宝したものも多いが、大抵ガ
イド会社に揃っている。食料も体調を崩した場合に備えておくだけでいいのではないか。
3.街での生活も大事。
「大町(ワラス)に戻り、英気を養い、また山へ」を繰り返す。洗濯屋、スーパー、レストラン、インターネット・
カフェ、銀行、温泉などを上手く利用している人がおられ、感心した。私の場合もBBホテルとガイド会社が一緒
であったので随分楽をした。